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(仮称 2022年10月文科省申請予定)

【トークセッション】ボンディングシップを紐解く

2022年3月26日(土)に行われたイベント「Co-Innovation Conference 2022」では、「ボンディングシップを紐解く」をテーマに、飛騨市長・都竹さんやNPO法人G-netの代表理事・南田修司氏、ボンディングシップに参加した学生や企業を交えたトークセッションを実施しました。その内容について一部をピックアップして紹介いたします。

《参加者一覧》
・南田 修司(NPO法人G-net代表理事)
・都竹 淳也(飛騨市長)
・飛騨市プロジェクト 参加生(中垣さん)
・日本ハムファイターズプロジェクト 受入担当者(笹村さん)・参加生(藤原さん)・コーディネーター(浜中さん)

キーポイントは熱量の高さ


南田修司(以下南田) まずは都竹市長にお伺いしたいのですが、地域の視点からボンディングシップに感じる可能性についてお聞かせください。

都竹淳也(以下都竹) 今日の発表を聞いて、地域や企業での体験が学生にとってとてつもない学びになるんだということを再確認しました。自分で考えて、チャレンジして、悪戦苦闘する歩みが人を育てるし、ハードルが大きいほど人って成長するんだなとも感じましたね。

今回の事例は、日本ハムファイターズという一つの企業と我々のような地方自治体の違うタイプだったわけですけど、どちらも受け入れ側としてはかなり得られるものが大きいと感じました。

両方とも真剣に取り組んだからこそ学生さんも学びが多かったし、受け入れ側にとっても得るものが多かったと思います。本気度というか燃焼度が高かったから成果も大きかったのかもしれません。逆に、燃焼度が低いと貴重な学生生活がもったいないことになるリスクもあると感じました。授業料を取って実施するわけですから、クオリティコントロールがすごく大事で、そこの責任は大学にとってかなり大きいと思います。

南田 本気度が高かったという話に関連して、日本ハムファイターズさん側で学生さんの受け入れ体制づくりについて工夫されたことなどがあれば教えてください。

浜中さん(以下浜中) プロジェクトの設計はかなり大切です。今回、「プロジェクト自体はファイターズさんが本当にやりたいことですか」ということをまず議論しました。最初のミーティングで担当の笹村さんがやってる業務をすべてホワイトボードに書き出すみたいなところからはじめて、その中で笹村さんがやりたいけどできていないことを聞いていきました。

その上で、以前実施していたオークションにもっと力を入れたいということが分かってきたんですが、他の業務を抱えているので専従でオークションを実施するのは難しかったんですね。そこにインターン生を専従でつけましょう、というふうに設計しました。受け入れ側が本当にやりたいこと、熱があるポイントをプロジェクトとして設計していくことがまずは重要になるのかなと思います。

南田 熱を維持できるような受け入れ先を確保していくためにどんなことをされているんですか?

浜中 どの企業さんも熱は持っていらっしゃるんですよね。会社をつくったときやビジネスを立ち上げたときなど、何かしらの思いがあって活動していらっしゃると思っていて、それが仕事をしていく中で形骸化されてしまったり、言葉にならなかったりってことはあると思うんです。

コーディネーターは学生だけでなく、企業に対してもなぜそのビジネスをされているのかを丁寧に聞いていきます。そうすると、地域には熱がたくさん眠っているんだなということに気づきます。その熱を呼び起こして、教育とつなげるのがコーディネーターの役割なのかなと思っています。

視聴者からの質問 ボンディングシップは本気度がキーポイントだと感じました。本気度を高めるために実施している事前準備などはありますでしょうか?

南田 私の本業であるG-netはまさに本気系インターンシップという取り組みを17年間やってきました。本気度を高めるには、やれたらいいことじゃなくて、本当にやりたいことからプロジェクトをつくることが一つのカギになると考えています。

もう一つは、受け入れ側に学ぶ姿勢があるかどうかです。受け入れ側の学ぶ意識は熱量の高いプロジェクトに共通していることです。ともすると、若い人が来てくれて何かやってくれるんじゃないかという姿勢になってしまいやすいんですが、そうではなくて、若い人を活かすのは自分なんだという関わり方が大切になります。

都竹 熱源みたいなものは地域にたくさんあって、そういう人たちをどう探してくるのか。さらに動機づけをどうするのか。拠点を決めるんではなくて、熱量の高い人たちを全国で見つけながらつないでいく必要があるのかもしれないですね。拠点があるにしても、そこから半径200㎞くらいのエリアをカバーするとか、そういう形になる気がします。大学は永続するものなので、そのあたりの仕組みも大事なのかなと。

次の熱源を探す・つくるための掘り起こし部隊っていうんでしょうか。全国を行脚して人材を掘り起こす部隊が不可欠で、ここがうまくいかないとボンディングシップも成功しないように思います。

南田 今、ボンディングシップセンターの構想を練っているところなんですけど、全国13拠点それぞれに地域に根付いたコーディネーターを設置した方がいいと思っています。加えて、13拠点の周りにもハブ拠点をつくって、さらに他の地域にも入っていく企画についても20個ほど構想があります。

ボンディングシップの成果をどのように評価するのか?


都竹 もう一つ、聞いていて思ったことなんですけどね、ボンディングシップの成果を最初の段階でどれくらい見通せるものなのかが気になりました。このメソッドを組み立てることができるのかどうか、そこが大事だなと思いましたね。

南田 日本ハムファイターズの場合は実際どうでしたか?

浜中 これぐらいにオープンできるだろうとか、このぐらい集まるんじゃないかといった事業的な成果はある程度見通していたんですけど、一方でどのくらい学生さんが成長するか、どれくらい自分事として落とし込めるのかは見通せない部分が多かったです。今回は自分事として取り組んでもらえたので想定をはるかに超える結果になりましたね。

会場からの質問 ボンディングシップのゴールは企業や地域の課題を自分事化して社会のために活動していくことなのか、それともボンディングシップで学生自身の能力を伸ばしていくことなのでしょうか。また、能力がどこまで伸びたかを可視化することが必要なんじゃないかなと思いますが、それは難しいとも感じます。

あとは、中垣さんに自分自身がどう変化したのかをもっと聞いてみたいです。

中垣さん(以下中垣) テンションが落ちたときは飛騨のことを考えたくないとか、静岡の方が暮らしやすいみたいなことを考えてしまった時期もあったんですけど、ひと通り実践する中で改めて飛騨のことを考え直して、自分なりに落とし込んで、自信を持って飛騨が好きだって言えるようになったのは大きな変化ですね。色んな経験を経て、「物怖じしなくなったね」「堂々としたね」って大人の方に言われることが増えたので、場慣れする機会になったのかなと思います。

南田 ボンディングシップの成果をどう評価するのかはとても大事な視点だと思っています。先ほども話題になったルーブリック(評価方法)は我々も考えていますが、ルーブリックの内容が大事だと考えています。スキルやビジネスリテラシーはやればやるほど身につくものですしあまり重要視していなくて、むしろ建学の精神にあるように何を自覚するのかの方が重要です。自分自身に気づいていく。別の言い方をすれば、オーナーシップが持てるようになったか。そこを評価軸に取り入れたいです。

そもそもカリキュラムって予め用意されるものじゃないですか。つまり、はじまりはどうしても受動なんだと思います。自覚を間にはさむことで、学びそのものに主体性を持つことができるようになりますし、そういう変革の場がこのボンディングシップの実践なんじゃないかなと考えています。

会場からの質問 コーディネーターさんに対する研修や質の担保はどうお考えでしょうか。高校魅力化(文科省が中心になって行っているプロジェクト)でも結局、担当するコーディネーターによって質が左右される感じがいまだに払拭されていないところがあって、恐らくボンディングシップでも変わらないと思うんですけど、今後どうあるといいのでしょう。

南田 とても鋭いご指摘だと思います。ボンディングシップではコーディネーターに対しても研修プログラムを用意しています。僕もずっとコーディネーターをやっていますけど、能力よりもスタンスが重要なんですよね。ボンディングシップのコーディネーターは地域や若者にどう向き合うのか、ということを実証実験を繰り返しながら整理していきたい。

それに加えて、コーディネーターにとって最低限必要な知識やスキルについては定期的に研修を行います。オンラインで月1回は集まって、お互いの実践例を共有して、ケーススタディに取り組む場にもしていくつもりです。

ボンディングシップは役所の仕事と同じ?


都竹 今、高校でも探究学習がはじまっていますよね。飛騨市の吉城高校でも「YCKプロジェクト」(地域課題解決型キャリア教育)が行われていて、とてもいい具合に進んでいるなと思っています。他方で、学校のカリキュラムに組み込まれているので、最終的にどういう評価をして単位を出すのかも気になっています。すごくがんばったから“優”、ちょっとがんばったから“良”っていう話ではないですから。

短い期間で成果を求めるのは受け入れ側の問題なので、受け入れ側が求めるものを学生が達成できたかどうかは評価軸にならないんですよ。探究学習は自分で課題を見つけてもらうものなので、例えば、飛騨市からいくつかテーマを与えられたとしても、学生が「私はどれもやりたくないです」っていう可能性もあるわけです。でも、ボンディングシップの場合はそれを良しとしなきゃいけないですよね。その場合どう評価するのかな。

取り組んだ事象のKPIは学生の評価軸としてはまったく役に立たないと思います。例えば、買い物弱者支援のテーマがあったとして、「○人が買い物できるようになりました」という結果は飛騨市の成果であって、ボンディングシップの成果ではないはずですよ。そこってどうなんですかね?どう評価していくんでしょうか?

会場からの意見 「何ができるようになったのか」を評価軸にしないといけないですよね。授業としては「これができるようになる」という目標を立てて、それを達成できるかどうかがルーブリックにおけるポイントになると考えています。

例えば、「企画ができるようになる」「その企画を実行できるようになる」「その実行もどのレベルまでできるようになるか」といった具合に評価ポイントを細かく設計していきます。その上で最終的に学生さんに対して、「これはできるようになったね」「これはまだだね」というふうに評価していくことになると思います。

南田 どう評価するかはまだ議論しているところなんですが、問題を問題として受け取る、目の前の課題に対してアプローチができる、事象に対するアプローチだけではなくて、その経験を抽象化することができるようになる。その次の段階で横展開できるようになる。このようにステップアップしていけるかどうかも評価のポイントになってくると思います。

都竹 それ、すごくよく分かりますね。役所の仕事は課題解決に向けた取り組みなので、高校の探究学習やボンディングシップでやろうとしていることと、飛騨市役所が普段の業務でやろうとしていることはまったく一緒なんです。

役所に置き換えて考えてみると、中核になって動ける職員の差は課題を抽象化できるかどうかなんですよ。がむしゃらにやることはみんなある程度できるんです。そこから課題を抽出して、抽象化して、政策として普遍化して落とし込む。ある課題の中で実践のポイントを抜き出す力ってあるんですよ。それって汎用性があるんですね。色んな人に聞いたものを形にするときのポイントみたいなものがあって、それを実践としてプロジェクトにしたときに、もう一回そこからエッセンスを取り出して横展開するっていうのは極めて高度な技なんです。行政としては一番の到達点なんですよ。

会場からの意見 市長がおっしゃったように学問体系がそもそもそういった成り立ちなんですよね。現場で特殊解が出るじゃないですか。それをいくつかこなしていくことで一般解にしていく。これが理論体系になっていくわけです。特殊解から一般解、それが実践できるようになっていく。この大きな流れを大学教育でやっていかなければいけないと考えています。

中垣 一言つぶやいていいですか?

南田 もちろん!

中垣 今、授業でフィールドワークがあって、それに対して評価されるんですね。でも、なんでその点数なのかは知らなくって、どう評価されているかを聞くこともないです。学生は単位をもらえればいいやの精神なので、評価軸を厳格に決めるのであれば、それを学生にどうやって伝えるかも気になるし、伝え方の工夫もしていただきたいなと思いました。

都竹 いいつぶやきだね~!とっても鋭い。やっぱりちゃんと伝えないといけないですよね。どういう評価軸でどう評価したのか。説明責任ですよね。

会場からの意見 評価というかフィードバックなんですよね。そこはちゃんとやらないといけない。

南田 今日、宮田学長候補もおっしゃってましたけど、この実証実験を次にどうつなげていけるのかが非常に大事なのかなと思いますね。

都竹 ボンディングシップをきちっと体系立てて実現できたら、他に例がないですよ。探究学習で小中高校も同じように悩んでる中で、大きな影響を与えると思います。とってもチャレンジングではありますけど、日本の教育にとって大きな一歩になると思いますね。

Youtubeにてトークセッションが動画で閲覧できます。
https://www.youtube.com/watch?v=hcdduUgLnZI

NPO法人G-net代表理事南田 修司
1984年、奈良生まれ。奈良学園高等学校、三重大学大学院教育学研究科修了。 2009年に新卒でNPO法人G-netに加入し、副代表、共同代表を経て2017年より代表理事に就任。 中核事業である長期実践型「ホンキ系インターンシップ」は地方都市初の本格的事業化に成功し、政府による複数の表彰や全国で採用される高校「政治経済」教科書でも紹介されている。 また、13年より行う、中小企業のみぎうで人材に特化した新卒採用支援事業も大きな注目を集めている。 現在は、蓄積したインターンシップのコーディネートノウハウを活用し、大学教職員向けの研修や、カリキュラムの共同開発、社会人向けのプログラム開発にも従事し、地域と若者をつなぐ新たな仕組みづくりを進めている。
飛騨市長都竹 淳也
岐阜県飛騨市長。 1967年岐阜県生まれ。平成元年に筑波大学社会学類を卒業後、岐阜県庁に入庁。自治体国際化協会シンガポール事務所所長補佐を経て、平成11年度から梶原元岐阜県知事の秘書を務め、古田知事に交代後も平成17年度まで知事秘書を務める。 平成20年度からは総合企画部総合政策課課長補佐に就任し、現在の岐阜県政の基礎となる「岐阜県長期構想」をまとめ上げる。次男が重度の知的障がいを持つことから、自ら志願し障がい児者医療推進室長に平成25年度から就任。医療面から障がい者を支える事業に取り組む。平成27年12月、岐阜県庁を退職し、平成28年から飛騨市長に就任し現在2期目。「元気であんきな誇りの持てるふるさと飛騨市」を掲げ、みんなが楽しく心豊かに暮らせるまちの実現に向け、日々取り組んでいる。
NPO法人 北海道エンブリッジ 代表浜中 裕之
1985年 北海道留萌市生まれ。 1997年 砂川、滝川、蘭越、網走などを転々とし、1997年札幌に住む。 2005年 北海学園大学に入学。大学1年目はバイトにサークル、いわゆる大学生活を楽しみ、一方でその生活を続けていくことで、将来のイメージができず不安に。 2006年 大学のゼミの先生の紹介で、広告の会社でインターンシップに取り組む。広告営業を通じて、30社程のクライアントを抱え、東京や大阪に出張に行く学生生活が始まる。 2006年 大学3年次に同社の新規インターンシップのコーディネート事業に参画し、学生と企業のコーディネートを開始。1年後、自身がインターンしていた企業が解散することになり、独立を決意。NPO(任意団体)を設立。 2008年 北海学園大学経済学部を卒業。2012年にNPO法人北海道エンブリッジとして法人化し代表理事に就任。長期実践型インターンシップを軸に「様々なセクターと連携し、地域全体で若者を育成する仕組み」をつくる取り組みを行っている。

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